WELFARE

一昔前までは,ロボットを始めとする自動機械は工場などの限定された範囲でのみ使用されていました。 しかし,近年,我々の周りには自動ドアやエスカレータ,エレベータなど,さまざまな自動機械が登場し, 今後は福祉へのロボット技術の応用などによって,人間と機械が接触する機会はますます増えていくと考えられます。 そこで,こういった機器はこれまでの隔離された条件下で高性能な動作を行うのではなく,人間との接触を考慮した新しい特徴を備えることが必要になります。我々はこれを"人間親和型モーションコントロール"と定義し,人間に優しい機械を実現するために研究を行っています。

電動パワーアシスト車いすの運動制御

完全電動の車いすがあるのはご存知でしょうが,"パワーアシスト車いす"というものはご存じない方も多いのではないでしょうか。 この車いすは,人間が車輪に加えたトルクをセンサで計測し,その大きさに応じてモータによってアシストしてくれます。 我々はこのパワーアシスト車いすに,ジャイロセンサ,加速度センサ,などといった種々のセンサを取り付け, さらに制御装置を搭載することによって,傾斜がある道で直進したり,片手で楽に直進するといった利用者に優しい運動制御を研究しています。

生体機構のロボティクスへの応用

生体機構では「ニ関節筋」というものがあります。二関節筋とは,生物が太古に獲得し現在に至るまで手放すことの無かった多関節筋の一種であり,近年,生物の運動制御に大きく貢献しているとして注目を集めています。

一方,現在のロボット技術が発達した今日に至っても,未だに生物の巧みな運動制御を実現できていません。当研究室では生物特有の機構であるこの二関節筋をロボティクスへ応用し,関節モータにフォーカスを置いた既存の座標系とは違う,二関節筋を積極的に取り入れた座標系で新しいロボット工学を作っています。これにより, より生物に近いロボットの実現を目指し,また,ロボット工学を介して生体機構そのものの神秘を探っています。

また、近年高齢化社会の対策として福祉ロボットが注目を集めています。当研究室では福祉ロボットの中、人に装着され直接アシストする装着型ロボット(Wearable Robot)において研究を行っています。人のニ関節筋機構を含め、筋肉特性を考慮し、制御することにより人間親和的なパワーアシストの実現を目指しています。