NANO-SCALE STAGE

精密位置決めステージ

精密位置決めステージは,「人類史上最も精密な機械」といわれる半導体集積回路(IC)やフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置の中核部品です。ステージの位置決め精度とスループットが,ICやFPDの性能と価格を決定づけているため,「高速高精度位置決め」が常に求められています。

ところが,生産性向上のためにステージを高速駆動させると,1) 振動,2) 軸間干渉,3) アクチュエータの質量増大といった問題があります。そこで1) 高次共振まで考慮したフィードフォワード・フィードバック制御,2) 非干渉化制御,3) 新たなステージ構造の提案,などを行っています。その検証のため,エアガイドにより浮上し高分解能(1nm)のセンサを持ち,リニアモータにより駆動されるナノステージ1~3号機を用いて実験を行い,有効性が実証されました。

1軸ステージ

6軸微動+1軸粗動ステージ

カタパルトステージ

ワイヤレスステージ

ステージの位置決め精度を高めるためには様々な外乱を除去する必要があります。機械共振は設計により,摩擦による外乱はエアガイドを用いることにより解決できますが,ステージを動かすためのモータや各種センサに電力を給電するためのケーブルによる外乱は除去することが難しいとされてきました。

そこで本研究室で研究されているワイヤレス給電技術をステージに適用し,モータ及びセンサをワイヤレス給電により動作させることを目指しています。これによりステージにおいて長年の課題であったケーブル外乱を完全に抜本的に解決することができます。

工作機械

NC工作機用ボールねじ駆動ステージの精密位置決め制御・加工時における振動の抑制

様々な機械部品・装置を創り出すことからマザーマシンと呼ばれる工作機械。工作機械の加工精度を左右するボールねじ駆動ステージの精密位置決め制御及び加工時における振動の抑制を行っています。

Dura Stage

Dura StageはNC工作機械のステージで,駆動モータの角度だけでなく,ステージ位置も分解能1 nmのリニアエンコーダから検出でき,精密な制御法の研究に適した装置となっています。

・ステージの精密位置決め制御

精密な位置決めの妨げとなるボールねじ部の非線形摩擦の補償法を研究し,位置決め性能の向上に努めております。

・びびり振動の回避・抑制

工具が取り付けられる主軸モータの制御を高速高精度に行うことで,切削加工時に加工精度を劣化させる要因となるびびり振動の抑制に成功をしております。(極値探索制御を用いたびびり振動回避・抑制 https://youtu.be/qeBugY7NRm0)

Yuna Stage

Yuna Stageは多くのセンサを持つ1軸ボールねじ駆動ステージです。(a)ボールねじ及びリニアガイドの摩擦分離のための高精度なモータトルク制御とナット部のロードセル, (b)変動するダイナミクスのモデリングと同定のための変位センサと負荷側エンコーダを備え付けています。

・高精度システム同定

最適マルチサイン加振を用いて高周波まで高いS/N比で同定する事ができます。位置やワークの質量の変化による伝達関数の変動を考慮したモデリングを研究しています。

・高精度摩擦同定

ボールねじとリニアガイドの摩擦を分離したモデリングの研究をしています。これを用いて高い精度の摩擦補償が可能になります。

Motor-Bench

Motor-Benchは駆動側,負荷側エンコーダ,そして軸トルクセンサを備えたモータベンチです。シャフトやイナーシャ錘,軸トルクセンサ,カップリング等,様々な構成部品を自由に着脱可能な設計となっており,プラントパラメータ変動時の制御法のロバスト性の検証が可能です。

このモータベンチは,2慣性系と呼ばれる1次の共振を表現する系にモデリングできます。2慣性系の制御問題は,その汎用性から古くて新しい問題として30年以上前から現在に至るまで,共振抑制制御,減速器によるバックラッシ等の非線形性の補償等,広く研究されてきました。

我々のグループでは,2慣性系にモデリングできる産業界の装置(工作機械ステージや産業用ロボット)において,負荷側(減速器出力側)にエンコーダや広帯域な軸トルクセンサが装着され始めたことを踏まえ,それらのセンサ情報を有効に活用する新たな制御法の提案や実験検証を行っています。特に近年注目を集めている,柔軟な動きにより人との協働を可能にする力制御法の研究に取り組んでおります。

AFM

原子間力顕微鏡(AFM)とはナノスケールの針とフィードバック制御により物体の表面形状を測定する装置です。本研究室では測定時間の短縮や高精度化をはじめとして,弾性推定やフォースカーブ測定といった試料の力学特性の測定,さらには探針を用いたナノマニピュレーションに関する研究も行っております。近年半導体をはじめとした各種分野でデバイスの微細化が急速に進んでおり,AFMの制御はこれからのテクノロジーの進歩に欠かすことのできない技術です。