講座前任者の挨拶

 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 システム電磁エネルギー講座 電気制御システム学分野 教授として,2021年4月1日より,藤本博志 教授が着任し,これからの20年にわたって当該分野を大発展に導く基盤が整ったことを,ここよりお祝い申し上げます。


 この講座のルーツは,長い歴史をもつ,東京大学工学部電気工学科の電気工学第一講座であり,山村 昌 教授,茅 陽一 教授,堀 洋一 教授(2021年3月で定年退職)と継承されてきました。現在は,過去にとらわれない新たな領域を開拓しようという全学の意図のもと,柏キャンパスに新設なった新領域創成科学研究科の講座に形を変え,ますます意気盛んでありますが,そのもとは東大工学部で最も伝統ある講座の一つです。


 工学部電気工学科の起源は1873年に設置された工部省工学寮工学校電信科にまでさかのぼります。1886年にはそれまでの東京大学と統合されて帝国大学工科大学となり,電信のみならず,電灯,電力,電気鉄道,電話など広範な講義が行われていたといいます。これは大学の電気工学科としては世界最初の学科であり,その後,現在の電子系,情報系などを生む基礎ともなりました。1999年には,大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻が新設され,電気工学第一講座は名前を変えて,柏のシステム電磁エネルギー講座となり,本郷の伝統的な学問領域の枠にとらわれない新天地を開拓することを目指しています。「新しい酒は新しい革袋に盛れ」の精神であります。


 また一方では,このような歴史的経緯から,藤本教授は,本郷の電気系工学での学部教育(講義や実験)にも深く関わり,卒業論文の指導もフルに行います。古き伝統をしっかりベースに持ちながら,新しいコンテンツを育て,世界に羽ばたいていってくれることでしょう。さらに,柏キャンパスのもつ外に開かれた風土をおおいに活用し,他大学や外国の大学からの学生の受け入れや,企業との共同研究や社会人博士の指導もきわめて積極的に行っており,これからの新しい大学像を築いていってくれることと大いに期待しております。


 ますますのご発展をこころより祈念してやみません。

2021.4.1 堀 洋一(現 東京理科大学)